たまたま見つけたのですが、、、勉強になる

http://plaza.rakuten.co.jp/animalclub/diary/200408250000/

問い合わせ内容】
外国旅行に行くという知人に頼まれてポメラニアンを無料で1ヶ月間預かることになりました。知人が食べさせるようにと持って来たペットフードを与えていたのですが、その犬は下痢をしてしまいました。暫く犬の様子を見ていたのですがよくならなかったので、獣医師の診察を受けさせたところ、入院の必要はないだろうと言われ、薬をもらって自宅で飲ませていました。一旦は回復しましたが、結局死んでしまいました。
帰って来た知人に事情を説明しましたが、納得してくれず、慰謝料を払えと言われました。応じなければいけませんか?なお、私の預かり方にも獣医師の診断にも特別問題はなかったと思います。
治療費や他にもいろいろと費用がかかっていますが、私が支出した費用について知人には何の請求もできないのでしょうか?
預かったペットは、人が見ていないと手当たり次第に物をかじる癖があり、そのことを知らずに預かったため、大事な家具をかじられてそのままでは使用できなくなってしまいました。飼い主である知人は、そのような癖があることを私に教えれば預かってもらえなくなると思い黙っていたそうです。知人に家具の修理代を請求できるでしょうか?

【回答・解説】
無報酬で知人のペットを預かる行為は、寄託の中でも無償寄託に該当します。
無償寄託の授寄者の注意義務は、善管注意義務に比べて、自己の物と同一の注意義務に軽減されています(民法659条)。無償で物を預かることは好意から行なわれるので、その注意義務が軽減されていると説かれています。
「自己の財産におけると同一の注意」とは、その人の注意能力に応じた普通の注意のことです。注意能力の高い人も注意能力の低い人も、それぞれ普通の注意を払っていればよいことになります。したがって、注意能力の高い人が無償で物を預かっておきながら、普通の注意をしなかったために物を壊してしまったという場合には、注意義務違反となります。これとは逆に、注意能力の低い人に預けていた場合にその人なりの普通の注意をしていたが、それにもかかわらず物が壊れてしまったというときには、注意義務違反にはなりません。預かった人が普通の注意をしていたのであれば、預かった人の注意能力が低いから壊れたのだとか、もっと注意能力の高い人に預ければ壊れていなかったなどといって、預かった人の責任を追及することはできません。無償で他人に物を預ける人は、注意能力の高い人に預けないと何かあったときは、その損失を負担しなければならなくなる危険が大きいことになります。

お問い合わせの授寄者は、無償で預かったポメラニアンに知人が置いて行ったペットフードを与えたわけですから、その他に預かった犬が下痢をするような原因となる特別のことをしていない限り、普通の注意を尽くして預かったといえるでしょう。
また、暫く様子を見た上で獣医師の診断を受けさせています。これらのことから、「自己の財産におけると同一の注意」をしていたといえるでしょうから、注意義務を尽くしており、お問い合わせの授寄者に義務違反があるとは思えません。
授寄者に注意義務違反すなわち過失があれば、債務不履行として、寄託者に対してその過失行為から生じた損害を賠償しなければなりません。しかし、授寄者に注意義務違反がない、すなわち過失がないのであれば、寄託者にどのような損害が生じたとしても、授寄者の債務不履行とはならず、授寄者はその損害を賠償する責任はありません。
よって、知人の慰謝料を払えという要求に応じる必要はないことになります。

ペットを預かった授寄者がその保管のために必要な費用を支出したときは、それによって寄託物の価値が保存され、結局は寄託者がその利益を得ることとの衡平の観点から、授寄者は、その費用の償還と利息の支払を寄託者に請求することができます。民法は委任の費用償還請求の規定を寄託に準用しているので、授寄者が授寄物を保管するために必要と認めるべき費用を支出したときは、寄託者に対してその費用および支出した日以降におけるその利息の償還を請求することができます(民法665条、650条1項)。この場合の利息の利率は、予め寄託者と授寄者との間に約定がない限り、民事法定利率である年5分が適用されます(民法404条)。
お問い合わせの獣医師に支払った治療費は、必要な費用と認められますので、獣医師に支払った日から寄託者が償還するまでの間、年5分で計算した利息とともに寄託者に請求することができます。寄託者は、結果的にペットが死んでしまったからといって、その償還を拒むことはできません。支出した時点で必要な費用だったからです。また、治療費に限らず、保管に必要と認められる費用についても同様に償還を請求できます。

寄託物の性質や瑕疵により寄託物を預かった授寄者が損害を被ることがあります。
そのような場合については、民法は、寄託者がその性質や瑕疵を知っていたかどうかで扱いを異にしています。すなわち、寄託者は、寄託物の性質または瑕疵より生じた損害を授寄者に賠償することを要するのが原則ですが、寄託者が過失なくしてその性質または瑕疵を知らなかったとき、授寄者がその性質または瑕疵を知っていたときは、いずれも賠償しなくてもよいとされています(民法661条)。
お問い合わせについて検討すると、預かったポメラニアンには、手当たり次第に物をかじる癖があり、家具をかじられてそのままでは使い物にならなくなったというのですから、授寄者の性質により授寄者が損害を被っています。また、その犬を預けた知人は、その癖を知っていたのに教えてくれなかったというのですから、寄託者が過失なくしてその性質を知らなかったとはいえません。
しかし、授寄者がポメラニアンの種類や性質に詳しく、寄託者は教えなくともその犬の癖を知っていたという場合には、「授寄者がその性質または瑕疵を知っていたとき」に該当しますが、そのような特別な事情がなければ該当しないことになります。
よって、授寄者がその犬の性質を知っていたという場合を除き、寄託者である知人は、授寄者に与えた損害(家具修理代相当額)を賠償しなければなりません。

次回は、ペットの美容について、お話したいと思います。