「オペラ座の怪人」ようやく見ました

 皆様の中で大評判の「オペラ座の怪人」をようやく見る。確かに2時間半、短く感じる佳作。ミュージカルの舞台とは多少手を入れて、クリスティーヌが亡くなった後の1919年に彼女と結婚したと思われるラウルが回想する形式。画面も美しく、何よりも、ロイド・ウウェバーの最高の音楽(この方も、地位も名誉も女も手に入れたら、創作意欲がなくなったのでしょうか?数年前にロンドンで見た、新作のアイルランドの高校生のミュージカルはえらい退屈だった)。映画用に、容姿重視と思われるキャスト。クリスティーヌ役にはややジュリア・ロバーツの若い頃が入り、ファントム役の男優は、マスクをつけていた間はややアントニオ・バンデラスが入っているなあ、と思ったが、とったらあれ?私的には、歌唱力がいまひとつ印象に残るところまでにはいっていなかった(特にファントム)が、先月、NHK綜合の「英語でしゃべらないと」に出演した、クリスティーヌとラウル役の若手役者は、確かこのために歌の特訓をしたといっていた。仕方がないだろう。*1
 やはりリアルに撮影したものは迫力がある。ことにオペラ座のバックステージの映像は秀逸。この映画でも、パリと舞台としながら、ポッシュな英語を話す支配人層、イタリア訛りのプリマドンナ("H"の発音をしていなかったのが印象的。ヘイトがエイトになっていたりと)、フランス訛りのマダムなんとかなど、これが日本語吹き替えになると、みんな標準語になるのかもしれない。

*1:二人とも取り立ててミュージカルの勉強もしていないとか。女性の方はそれでも音楽に親しむ環境にあったとはいっていたけれども。それでもやればここまでやれる役者の層は凄い。驚嘆の一言。

「阿修羅城の瞳」を見る

 舞台では、余りの音楽の煩さに私の耳が耐えられなくなって1幕で退出した作品。この映画は、ファントム同様、まず映像が美しく、私の嫌いな血の場面もいかにもCGの作り物っぽいので耐えられた。噂にたがわぬ、宮沢りえの堂々とした出来。本当に今の彼女、綺麗だし(着物だと痩せすぎがそれ程きにならない。ハーフでありながら着物も鬘も似合う彼女、いいねえ)ノリノリ。染五郎は、表現が悪いけど、どうも貧乏くさいのが前から気になる。うまいし、器用だし、目は美しいし、動きもいい。それでも、線の細さというか、なんというか。個人的な感覚だけれども、高麗屋一家と双子山・若貴一家のわざとらしさが前から嫌いで、そのあたりにももしかしたら一因があるのかもしれない*1渡辺篤郎はこの手の役柄の常連だけど、セリフがイマイチ、イマニ。樋口可南子がさすがの存在感。南北役の小日向文世がやけに軽いタッチだが、あれは意図あってだろうか?(すみません、粗筋やら役柄飛ばしています。)
 染五郎は、19歳のときのロンドンの「歌舞伎ハムレット」を見たそきはえらく感激したが、所作も上手いし、コメディー感覚もあるこの人、どこかで一皮向けてほしいものだ。
 最近、宮沢りえ主演の映画を3本見たことになるが(「トニー滝谷」「父と暮らせば」「阿修羅城の瞳」)この順番でよかったです。やはり「トニー滝谷」が秀逸。「たそがれ清兵衛」もよかったっすね。

追記(1)一つ気になったこと。調べればわかるでしょうけれども、中村座の小屋の中、あの頃はもしかしたら、花道は現在の鳥屋から舞台の真ん中へ、斜めに出ていたのでは?とちらりと思う。芝居小屋によっても、時代によっても違うのだろうけれども。

追記(2)見ながら思い出した事として、このストーリーは典型的なあたって当たり前の出来になっていること。去年オペラの勉強会で聴いた話だったが、英雄物語についての論文がアメリカで出ているとのこと。「指輪物語」にしろ、「スターウォーズ」にしろ、全てその構成にのっとっているらしい。いつか探して今度こそ頭の中に畳み込んでおかないと。

追記(3)宮沢りえの阿修羅像のCG、テレビ東京で金曜日か土曜日にやっている「トホホ人物伝」に出てくるCGみたいでした。鬼退治って、蝦夷退治とか、差別の問題とも深くつながりがあるのでしょうね。大体、役者自体がもともとそんな中からパワー持って生きてきたという歴史もあるし。

*1:幸四郎が一時口癖にように、「踊りなら染五郎、歌なら松たか子が一番、って言っていましたね?気味悪さの極地でした。」