「阿修羅城の瞳」を見る

 舞台では、余りの音楽の煩さに私の耳が耐えられなくなって1幕で退出した作品。この映画は、ファントム同様、まず映像が美しく、私の嫌いな血の場面もいかにもCGの作り物っぽいので耐えられた。噂にたがわぬ、宮沢りえの堂々とした出来。本当に今の彼女、綺麗だし(着物だと痩せすぎがそれ程きにならない。ハーフでありながら着物も鬘も似合う彼女、いいねえ)ノリノリ。染五郎は、表現が悪いけど、どうも貧乏くさいのが前から気になる。うまいし、器用だし、目は美しいし、動きもいい。それでも、線の細さというか、なんというか。個人的な感覚だけれども、高麗屋一家と双子山・若貴一家のわざとらしさが前から嫌いで、そのあたりにももしかしたら一因があるのかもしれない*1渡辺篤郎はこの手の役柄の常連だけど、セリフがイマイチ、イマニ。樋口可南子がさすがの存在感。南北役の小日向文世がやけに軽いタッチだが、あれは意図あってだろうか?(すみません、粗筋やら役柄飛ばしています。)
 染五郎は、19歳のときのロンドンの「歌舞伎ハムレット」を見たそきはえらく感激したが、所作も上手いし、コメディー感覚もあるこの人、どこかで一皮向けてほしいものだ。
 最近、宮沢りえ主演の映画を3本見たことになるが(「トニー滝谷」「父と暮らせば」「阿修羅城の瞳」)この順番でよかったです。やはり「トニー滝谷」が秀逸。「たそがれ清兵衛」もよかったっすね。

追記(1)一つ気になったこと。調べればわかるでしょうけれども、中村座の小屋の中、あの頃はもしかしたら、花道は現在の鳥屋から舞台の真ん中へ、斜めに出ていたのでは?とちらりと思う。芝居小屋によっても、時代によっても違うのだろうけれども。

追記(2)見ながら思い出した事として、このストーリーは典型的なあたって当たり前の出来になっていること。去年オペラの勉強会で聴いた話だったが、英雄物語についての論文がアメリカで出ているとのこと。「指輪物語」にしろ、「スターウォーズ」にしろ、全てその構成にのっとっているらしい。いつか探して今度こそ頭の中に畳み込んでおかないと。

追記(3)宮沢りえの阿修羅像のCG、テレビ東京で金曜日か土曜日にやっている「トホホ人物伝」に出てくるCGみたいでした。鬼退治って、蝦夷退治とか、差別の問題とも深くつながりがあるのでしょうね。大体、役者自体がもともとそんな中からパワー持って生きてきたという歴史もあるし。

*1:幸四郎が一時口癖にように、「踊りなら染五郎、歌なら松たか子が一番、って言っていましたね?気味悪さの極地でした。」