蜷川「キッチン」

 いやあ、見直しました、完璧に、成宮寛貴君を。昨年のさいたま芸術劇場での「お気に召すまま」を見て、何をいっているのかわからない、声も通らない役者なんて、金を払って見る価値があるのか、と思っていましたが、再び蜷川幸雄が主役に使う。それこそ蜷川さん、大丈夫?と思っていたら、化けましたね〜素晴らしかった。
 このキッチン、詳細は、http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/kitchen/index.htmlにありますが、あくまでも私はマッサラで知識がないままに見ました。ロンドンの馬鹿でかいとあるレストランの厨房。これがまさに現代の人間社会の縮図となり、ユダヤ人、アイルランド人、ドイツ人、キプロス人などなど、様々なバックグラウンドを持つそれぞれの職人たちのまぜこぜ世界。それこそ、私がしつこくいっている、訛り、アクセントによってそういう違いが英語なら出るところを、蜷川幸雄はあえてドイツ語をそのまま使って字幕を使うなど、さすがそこらへんの演出家とは違う力量を表す。
 前半は、混乱を主体として表現し、後半は、主役のピーター(成宮)が中心になって苛立つ様が、まさに現代人の縮図となって、その表現力が成宮のもつ個性と爆発的に共鳴して素晴らしい舞台効果を挙げていた。ちょっと他の役者ではそこまでの表現が出来たかどうか、と思わせるほどの力演。蜷川幸雄がよくぞここまで育ててくれた、ともいうべきか。かつ舌もかなりよくなっていた。コクーンとさいたまとの劇場の音響の違いもあるかもしれないが、コクーンの方が古い劇場だということを考えても、成宮の声調振りがわかる。
 他の役者も、若いながら、それぞれが力量を十分発揮し、いい舞台だったと思う。
 これで更に楽しみになったのが、7月の歌舞伎座であることはいうまでもない。
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*1:これで、昼夜ともに『買う権利』が当たってお譲りしたぴかちゅうさんに大してホットした気分になった私。ぴかちゅうさんの感想アップ待ち遠しい。