フランク・シナトラ、ライザ・ミネリなど

 昨日の日本人的音痴に続いて考えてみると、フランク・シナトラも音痴だった。個性と美声でステキだったけれども。私がした親孝行の一つは、ロンドン滞在中に両親が遊びに来た際、ロイヤル・アルバート・ホールでのフランク・シナトラのリサイタルに連れて行ったこと。多分、今までいったコンサートで一番盛り上がったコンサートであったといっていいだろう。その2、3年後にシナトラはなくなったと思ったが、回りの年齢も高かったこと。私たちは正面に近い8人のボックス席の3列目あたりに陣取ったが、そのボックス席一番前にいたおばさんが興奮して、途中から立ち上がって一緒に歌うので、後ろは見えないし煩い。高齢者が多いゆえ、立ち上がっているのは似つかわしくない。周りがいくら、(足が悪いので座って歌うシナトラを射して)「ほら、ミスター・シナトラだって座っているのだから、あなたも座りなさい」というと、「ノー、アイ・キャーント、アイ・キャーント」。「みんな遠くからシナトラを見に来ているのだからあなたは座りなさい」といっても「私だって遠くから来てるのよ」と聴くミミ持たない。それだけが残念だったが、さすがのスーパー・スーパー・スター、真のカリスマを見た気がした。
 同様にロベルト・アラーニャのロンドン・デビューであり、私がオペラにのめりこむきっかけとなった「ラ・ボエーム」などにも連れて行ったが、これは猫に小判だったと思うがロイヤル・オペラ・ハウスの雰囲気は楽しんで貰えただろう(クマテツが真面目に踊っていた時代に主演したバレエにもいったし)。
 故ダイアナも来ていた「サミー・デイビス・ジュヒアに捧げる」ためのライザ・ミネリのコンサートにも一緒に行った。ライザは凄いスターだと思っていたが、たまたまテレビでミハエル・バリシニコフと一緒に並んで踊った彼女を見て、余りのお芋さんぶりにがっかりしてしまった。やはりスターは、それなりの相手と一緒にしか共演しては駄目だという見本のようであった。