[新劇・舞踊][伝統芸能][オペラ・クラッシック]「スペクタクル十戒」そして観客の変化と

 フジテレビからのチケット関連のメルマガをとっているので、「スペクタクル十戒」のモニターに申し込んだところ、私も友人も当選したので、せっかくだからと3月4日金曜日と9日水曜日と2回この(出来が悪いとしかいいようのない)舞台を見に行った。
 4日は初日ということもあるのか、満員(にしたよう)で、テレビカメラが回り、特別ゲストの平原綾香がカーテンコールで出演。席はB席で後ろの端っこ。9日はやや空席もあったが、カーテンコールでは体操選手まがいのアクロバティックなダンスを丁寧に見せてくれた。席は後方ながら中央で大変見やすかった。
 まず、どうして出来が悪いか?ナマの舞台を見た、という感触がゼロなこと。本当に出演者は歌っていたのかもしれないが、代々木体育館というでかい器でガンガンと音楽を鳴らし続けて、物凄い振動も同時に起こる。歌手はみなそこそこの歌声だったが、作曲担当者がミッシェル・ポルナレフを崇拝しているとかで、みな、ポルナレフを彷彿するかような似たような曲。あれだけ煩いなかなのに、やけに眠くなる。
 話のほうは、ご存知、モーゼの十戒の話だが、ただストーリーをなぞっているだけで、見たほうにとっては全く感動はない。一言でいうと、ディズニーランドの見世物を大大的に見ている感じ。私はこれからモニターの感想も送らなければならないのだが、正直にそうとしかいいようがない。
 今どうして、このミュージカルを日本に大金かけて持ってきたのかが謎だ。いつもフジテレビ主催のエンタメは、昨年のベルフィン・フィルやザルツブルグ音楽祭を始め、他社のチケット代金よりも1−2割高い。ベルリン・フィルのS席とウィーン・フィルのS席の料金の違いを考えると明白である(昨年の場合前者が36000円、後者がサントリーホール主催で32000円か33000円だったかな?)。ザルツブルグの「フィデリオ」は若手の歌手たちが頑張ったが、とてもS席58000円のレベルではなかった。勿論、チケットをさばくのには苦労している様子ではあったが。
 そんな中で、今回発見したのが、カーテンコール時の観客の興奮の仕方。まるでこれもマニュアル化したかのようなスタンディングと歌手たちへの群がり方である。初日は満員の場内ほぼ全員がスタンディングとなった。9日はさすがにアリーナ席と後方の一部だけがスタンディングであったが、もしかしたら、観客たちも「最後にはスタンディングして自分ものって楽しまないと、それもチケット料金のうち」とでも思っているのではないかと感じた。と同時に、ナマ舞台の見方が21世紀に入って確実に変化していることを実感した。
 その一つの例が、昨今の歌舞伎、ことに新勘三郎の出演した歌舞伎での観客のスタンディングである。古くからの歌舞伎ファンには眉をひそめる人も多いだろう。私もどちらかというと、弱冠13年余の歌舞伎鑑賞暦ながら、あの雰囲気にはなじみたいと思わない。例えば、おくだ健太郎氏のイヤホンガイドで歌舞伎を見たときのような、違和感が残るのである。
 それでも時代の波の変化にはおっついていかざるを得ないのだろうか?これからが見所である。(このトピックについては、追ってまた取り上げてみたい)

追記:私なりに感じたことを書いたけれども、やはり本当に感激して、ブラボーと叫んでスタンディングオベーションした人も多かったのでは、とも同時に感じる私である。お前の感性が悪い、とどやされるかもしれない。