3代目実川延若の「研辰の討たれ」
昭和57年、1982年歌舞伎座の上記演目の録画を、歌舞伎仲間から借りて見る*1。一時間強で、野田版よりも軽い。これを見ていると、いかに野田秀樹がうまく野田版を味付けしたかがよくわかる。こういう『見る目』を持つってことが、実際に創造することよりもずっと重要な能力のような気がする。
野田版の勘三郎演じた守山辰次が、故・3代目(だと思う、違っていたら教えて下さい)実川延若、三津五郎の討たれた侍役・平井市郎右衛門が脇役?だった歌門とかいう人(だったっけ?かなり三津五郎向けに野田秀樹があてがきしたのがよくわかる)、染五郎と勘太郎演じた親の敵を討つ九市郎・才次郎兄弟に梅玉、東蔵(なんか年齢が逆で変な感じがした)、福助演じた奥方役に故・我童*2などなど。この版はこの版でなかなか楽しかった。
延若というと、2代目が美男で、15代目羽左衛門と並ぶ女たらしで有名だった。関容子さんの「芸つくし忠臣蔵」によると、若い日の故・六世歌右衛門が、2代目延若が高師直を演じた際に顔世を演じ、延若の腕の中にいたときに、ずっとこのままでいたい、と思わせるような色気のある人だったとか。こういうエピソードはどうしても忘れられない。