文楽通し@国立小劇場

国立劇場40周年記念公演の一環.思えば30周年がついこの間で記念グッズ貰った記憶が既に一昔.今,与えられたこの時を如何に大事に生きるべきか,そしてそれがどんなに難しい事か,と今更ながら.

第一部:奥州安達原 しょっぱなから何度も<非人>という言葉,もしかしたら放送禁止用語が連発で目が点.思えば芸能って,元々は非人が演じるものであった事と無縁ではあるまい.彼らは,その芸能舞台の上で叫びたいものがあった筈.(東京だか)メキシコオリンピックで、アメリカの国人選手が陸上競技のメダル授与式で,白い靴を脱いで掲げ上げた選手がいた事を思い出した.当時はまだキング牧師が存命だったのかもしれない.時代は流れて40年,丁度国立劇場の歴史とほぼ重なる.人権問題がどれだけ進んだか,或いは新たな別の形で逆行したか,考えてしまう.

第二部 眼目の合邦.一昨年5月に朝日カルチャーにて住太夫があと2年はやれると言っていたのを思い出し,今年がその2年だと気付いて愕然としたが,流石の他の太夫を圧する語りに溜飲を下げたのもつかの間,最後迄声が続かず,かすれ,錦糸の三味線の音に語りがかき消された段切れ.まだ初日,心配.それにしてもやはり見応え,聞き応え.失礼ながら初めて文雀の人形が神々しく見えた.それにしても玉手という女は,もしかして自分の中で貞女に酔ってしでかした事件のようにもとれてしまうのは,昨日のジャンヌダルクと同様.これから3部蓑助のお三輪です.雀右衛門のお三輪,又見たい!