マリア・ジョアン・ピリス(ピレシュ)

 先日の日曜日、N響アワーの特集は、ピリスのモーツァルト。最初の10分程はちょっと見られなかったが、37歳、48歳(だと思われる)のピリスの姿が。私が最初に見たピリスは1991年か2年で、確かコンセルへボウとの競演。48歳の後ろに髪を束ねた姿だった。あ、あのときの、アルバートホールのピリスだ!彼女ほどピアノを弾いている時の後ろ姿の美しいピアニストはいないと思う。まさに空前絶後の後姿の美しさと音の美しさで、別世界に呼んでくれる。プロムスで最も安い指定席で見たので、サントリーホールで言えばLA席を3階から覗き込むようなところから、彼女の小柄な美しく、静止したかのような後ろ姿を見た時間が忘れられない。
 30代のピリスは私にとって初体験。当時の流行だったのかな?パーマをかけたちょっとヒッピー風で力強いモーツァルトだった。ちょっと聞きそびれたが、当時既に病気から復帰したときとか。20年以上前に、30代で癌から復帰したとしたら、やはり神様がピリスにはまだこの世の人々に少しでも心を癒し、希望の灯をともす役割がある、としてくれたとしか思えない。
 ちなみに、小柄な彼女と好対照な長身フランス人バイオリニスト、オーギュスタン・デュメイとの夫婦関係はどうなったのか?*1かつてはよく二人で競演していた。ベートーベンのヴァイオリン・ソナタの美しかったこと。最高の「春」を聞いた日が忘れられない。
 小山実稚恵と連弾なんかしたこともあったが、同じ時間に同じピアノで、どうして出てくる音がこうも違うのかということをみせつけてくれた。まるで、今年1月にたまたま連ちゃんで上原彩子アルゲリッチのピアノを聴き比べたときと同様の感想。この差は、年齢でも経験でもない、まさに天から授かったものの違いとしかいいようがない。ピアノではないが、ロンドン交響楽団何十周年の記念ガラ・コンサートに行ったとき(勿論ロンドンのバービカン・ホール)、指揮者がマイケル・ティルソン・トーマスからショルティに代わった途端のオケの音の違いを思い出す。私がナマショルティを聴けた唯一の機会だった。

*1:もし、私のこの解釈が間違っていたらすみません。よく競演するな、と思っていたらどこかで夫妻だと書いてあるのを見ました。多分、身長差40センチ位?今、はてなキーワード見ましたが夫婦という文字はなく。実質夫婦だったのでしょうか?まあ、どうでもいいですが。癌を克服というのも私の思い違いかもしれません。ご存知なかたいらしたら教えて下さい。