『失踪日記作者: 吾妻ひでお出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2005/03/01メディア: コミック購入: 28人 クリック: 293回この商品を含むブログ (1143件) を見る』と『田上菊舎』

 一昨日のダイアリーに吾妻ひでおの『失踪日記』をアップしたところ、リンク元からホームレスの方のブログがあることなどがわかり、色々と考えてしまった。
 まず第一に多くの読者が注目するように、私も「ホームレス」の生き方はちょっと想像できそうで出来ないため、まずそのあたりから手にとってしまう本である。大体、家族が口をつけたものでも食べるのがイヤな位、神経質な私なので、とっても吾妻さんのようにゴミ箱あさりなんてできっこない。自らの手で命を絶ったほうがましだ、なんて思ってもしまうが、はて、どうなのだろうか?そのくせ、その強さ、潔さには、自分になりえない凄さを感じてしまう。
 そんな時、 たまたま、柴桂子さんの講座を取る機会があり、「江戸時代の女性の生き方」についてのお話を伺う。柴さん曰く、江戸時代は封建的で女性の自由なんてまるでなかった、なんていうのはウソで、自由にあるがままに生きた女性が沢山いたと。それは、一部アメリカでも注目されていて、お隣の中国などとは大違いのある意味、大胆な生き方をした女性が結構いて、それも旅日記などをかなり残していたらしい。
 その一人、「田上菊舎」(人の名前です)という尼さん、俳人、絵描き、茶道家、物書きのことを伺う。この人、旦那さんが亡くなった後、29歳で出戻って尼さんになってからの生き方が凄い。全国津々浦々、ホームレスのトラベラーとなり、その当時の一流の文人と交流しながら、一つ一つの文化芸術をモノにしていく。何せホームレスだから、旅姿は最低限、書家といいながら、重いものは持ち歩けないので、木で作った硯箱を持ち歩くなど、不思議な生き方をしている。漢詩をモノにしたいと思ったら、そのために九州まで飛んでいき、中国人からジカに習うなど、その行動力も凄い。そちて、1826年に74歳の天寿を全うする。
 なんとなく、吾妻ひでおの「失踪日記」とつながるものを感じてしまった。吾妻さんもすくなくとも数年間は何からも自由な世界に生き、また、その時が実は最も健康的な生活だったとおっしゃている。私が感じるに、その時に見てきたものこそ、深く鋭い視線に裏付けられていたように思う。それも恣意的ではなく、自然に。
 ここで突如思い出した。見るからにホームレスを車に乗せるといった男って、一体何者だったのだろうか?