ラプチュア-うちょうてんな人々@ステージ円

先日新国で見たコペンハーゲンに続いて演劇らしい演劇を見た.それは一途に台本がしっかりした外国作家のものであり,台詞劇であり出演者がしっかりと舞台俳優としての素養を身に付けているという事.これが当たり前の様でなかなかそんな当たり前の舞台に出会わないのだから不思議.私が舞台好きになったのはシドニーでのワーキング・ホリデーでの1年間の滞在がキッカケだ.この作品の作者はオーストラリア女性.周りはノー天気に青い空,蒼い海,白い砂浜がある僕達は全てを持っていると公言して憚らないオーストラリア人の印象が強い反面,移民社会,世界のどこからも物理的に隔離されている事実,アメリカや英国へのコンプレックスなど,中味はそれなりに複雑なものがあった.私が住んでいた頃から時間が経っている為,21世紀の問題は分からないが,シドニー五輪辺りを機に随分すれる所はすれてしまったかもしれない.

さて中味は至極英語社会を翻訳した様相で,我々日本人にとっては少々煩い位に台詞が飛ぶ.ドイツ人ならもっと飛ぶだろうが,それでも基本的に人間は皆同じ.この作品では友情や夫婦を取り上げているが,親子や兄弟といった血族や教師と生徒など,そうあるべき関係の裏の本質がトリックスターを介して姿を現すといのは作品としては古典的手法だ.火事で家を無くした夫婦の変貌ぶりは見ていても共感出来る所迄書けていないと感じたが,作者が書きたかったのは長年の友情に隠れた欺瞞と豊かな中流クラスの人間がいかに危うい土壌にいるかを訴えてあなた方はどうなの?との問い掛けだろうから,その意味では成功していよう.

ステージ円はストレート芝居を見るには理想的空間で大変心地良かった.シンプルながらよく考えた美術も効果的.ここで岸田今日子さんを拝見出来なかった事が残念