ク・ナウカの「サロメ」

 ちょっとこちらのブログでお知り合いになった方とメールのやり取りがあった関係で、以前から(一昨年から)疑問だった、2003年(もしかしたら2002年?)に日比谷公園で演じられた、ク・ナウカの「サロメ」について、万が一、私以外の方でご覧になった方もいらっしゃるかもしれないのでご意見を伺いたいです(id:dasManさんにも、「サロメ」以外のク・ナウカ作品を上げられていたところに書き込みをしてご迷惑をお掛けしたことがありました。今調べたら、1月16日ですか?その位、ずっと気になっているのです)。
 このク・ナウカ、いつも公園とか、美術館、博物館などで、文楽からヒントを得たのか、宮城聡さんがいつも個性的な演出で、『演者』と『セリフを言うもの』とを分けたユニークな作品を数々発表され、国際的にも高い評価を得ている集団だと私は理解しています。
 一度見てみたいと思い、日比谷公園での「サロメ」を見に行ったのですが、これが面白いには面白かった。上記のような個性的な演出(基本、ガクランみたいな黒づくめの男性が女性の分も含めてまるで義太夫のようにセリフを担当、演者はサロメを演じた美加利以外は全て男性で文楽の人形の如く演じている)。通常は床に穴を掘ってそこからの声でヨカナーンは演じるのに、逆に木の上に蜘蛛の糸の如く網をはってその上にヨカナーン役者が蜘蛛の如く居座ったり。
 前後しましたが、開演前に、セリフ担当の役者たちがワインを配ったり、日本でも、東京でもこんな贅沢な雰囲気でゆったりとオープンエアーの芝居が見られるの?とワクワクしたものです。
 ただ、ここで問題が。それも私にとってはえらく大きな問題が。美加利演じるサロメの踊りがカーット!だったのです。ただ、大きく両手を広げて、照明を消した演出だったと記憶していますが。当日配られたチラシによると、「(多分外国で)美加利こそサロメの年齢に近い美少女そのものを演じた」というような美辞麗句があったので、私もこの美加利に期待したのですが、私の目からは単に可愛い、というだけで。ヘロデ王が変質でもない限り、ヘロディアスが嫉妬に狂うほどの妖艶な魔力を秘めた少女サロメにはとっても見えない、健康少女だったのです。勿論、ヨカナーンの首が欲しいというのも納得いかないほどの健康的なサロメ
 たまたまこの前後に、新国立劇場で「サロメ」を何度も上演し、オーチャードではフラメンコの「サロメ」や映画までやっていたときだったので、余計に個性的といえば個性的、サロメの踊りも妖艶さもないので残念といえば残念な作品だったのです。
 ついでながら、外人には美加利は凄く魅力的に見えるのか、新国立劇場の記録的大失敗作、バレエとオペラの合体を目指した「スペインの煌き」*1の演出家に気に入られ、可哀想な役どころ(つまり見栄えしない、あの子一体何しているの?歌わない、踊らないでいるだけで)を演じていました。
 踊りをなくしたことについては、たとえが飛びますが、バイオリン界の奇才、ギドン・クレメルが、あの美しいメロディーのチャイコフスキーのコンチェルトをメロディアスに弾かなかったのと同じような効果を考えたのかもしれないですね。まあ、クレメルのたとえはよくなかったけど、観客の想像力を信じていた、とでもいいますか。
 どなたでも、ご意見、ご感想ある方、是非、コメントでも直メールでも下さい。お待ちしてます。一つでも来ると嬉しいなあ。*2

*1:そういえば、ジョン・健・ヌッツォ、このときもキャンセルしてたね

*2:私が宮城さんの存在を知るきっかけになったのは、以前にたまたま文楽を見に国立小劇場でお弁当を食べていたら、お隣のさえない小柄な男性に数人が声をかけている。思い切って、どなたですか、と聞いたら名刺を下さったのがご縁でした。昨年11月に、静岡芸術劇場(SPAC)で「小説谷崎潤一郎」の再演の際もいらしていて、私の真後ろに座って致した思い出が。