1988年初演以来初観劇の東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」

 棚からボタ餅の機会をいただき、4月8日、1988年の東宝ミュージカル「レ・ミゼラブル」を見て以来、何と16年ぶりに拝見する機会を得る。
 実は1988年、私はロンドン出張の際、同僚のフィンランド人から「絶対にレミゼは見るべきだ」とのアドヴァイスをいただき、2週間連日、日に4件の客へのプレゼンの続く中、身体をひきづって見た本場のミュージカルであった。この後、ニューヨークでもレミゼを見てから帰国、確か日本でもレミゼの初演があるということで、勇んで見た記念碑的な公演であった。

 下記、私の頼りない記憶の限り、初演と2005年4月8日のキャストを併記してみる。
            1988年初演      2005年4月8日
ジャン・バルジャン    滝田栄       今井清隆
ジャベール        鹿賀丈史      鈴木綜馬
フォンテーヌ       岩崎宏美      井料瑠美
テナルディエ       斎藤晴彦      佐藤正宏
エポニーヌ        島田歌穂      笹本玲奈
マリウス          野口五郎      藤岡正明

 本当のところ、初演は、生まれた初めて見たスタンディング・オベーションのロンドン公演と比べて余りの力量の差を実感した、私の中での記念碑的公演でもあった。ロンドン、ニューヨークのレベルに達していると思われるのは島田歌穂のみで、歌唱力がやや劣っても演技力と存在感で堂々としていた滝田、鹿賀、斎藤はおいておいても、岩崎宏美の歌唱力はまあまあでもつったったままの演技力ゼロの存在、野口五郎の歌はうまいはずで演技もそこそこながらマイクを使っても声量がなさすぎの存在感ゼロの姿、と、ショックが大きかった。

 申し訳ないながら、その後、東京でミュージカルは見ない、という方針を決めてしまった公演でもあった。

 それから15年半。バレエやオペラでも日本の舞台のレベルアップは如実であるが、このレミゼでもそれは同じだった。全体的に、落ちこぼれの歌い手や演技者はゼロ、その割には役者は年齢がぐんと若返っている。特にそれを感じたのは、主役よりも脇のアンサンブルで如実であった。
 主役クラスでは、初演の滝田、鹿賀、斎藤といった芸達者で個性的な魅力は僅かに鈴木綜馬に見出せたものの(彼の存在感はグンバツ、今、はてなキーワードで見たら、彼はもう45歳?全くそうは見えない若々しいパワーある役者である)、余りにお行儀がよくなったかな、という印象も否めなかったことも確か。恐らくそれは、初演よりもはるかに刈り取った、短くした演出にも理由が求められるだろう。
 
 ついでながら、1991年にロンドンでジャパン・フェスティバル開催の折、劇団四季が日本バーションの変わり種の「ジーザス・クライスト・スーパースター」を公演したが、このとき、一人大変な歌唱力の役者がいた。丸坊主で大柄だった、しか覚えがないが、彼クラスの、或いは島田歌穂クラスの歌の上手いミュージカル・スターがもう少し出てくれたら、もっともっと日本のミュージカルが面白くなるのでは、と感じた。

 それにしれもこの一昔半でこれだけ底上げした日本の舞台、感激したことはいうまでもない。この素晴らしい機会を下さった方に心から感謝する。