第32回NHK古典芸能鑑賞会鑑賞(NHKホールの馬鹿でかい会場にて)

 

http://www.nhk.or.jp/event/music/kotengeino2005.html
■第1部 「色彩東西六佳撰」(約1時間30分)
進行:茂山逸平、茂山童司(大蔵流狂言師
(1) 半能(観世流
  「石橋」 師資十二段之式
  シテ:関根祥六、ワキ:宝生閑、シテツレ:関根祥人
  笛:一噌幸広、小鼓:鵜澤洋太郎、大鼓:亀井忠雄、太鼓:金春惣右衛門
(2) 舞踊(長唄常磐津・義太夫掛合)
  「新版酒餅合戦」 杵屋正邦・作曲 /花柳輔太朗・振付
  酒:猿若吉代  餅:花柳寿南海 大根:藤間洋子
  (出演者急病により、上記のように配役が変更となりました。)
長唄) 今藤尚之、杵屋六三郎
常磐津) 常磐津一巴太夫常磐津八百二
義太夫竹本朝重、鶴澤寛也   
(囃子) 仙波宏祐 社中
(3) 「三枚続廓賑」 「新潟みやげ」 〜相川音頭ほか〜新潟・古町芸妓連
  (唄)早坂光枝(三味線)本條秀太郎
「京の座敷舞」 〜御所のお庭ほか〜京都・先斗町歌舞会
  (唄)本橋 道(三味線)本條秀太郎
「江戸の祭」 〜神田祭ほか〜東京・女流若手舞踊家連中
  (唄)神田 福丸(三味線)本條秀太郎
■第2部 新歌舞伎十八番の内 「船弁慶」 
  〜初演から120年を記念して〜(約1時間10分)
振付:二世藤間勘祖
静御前平知盛の霊) 中村富十郎
武蔵坊弁慶中村吉右衛門
源義経中村梅玉
(四天王) 中村玉太郎、坂東亀三郎中村種太郎中村吉之助
(舟長) 中村東蔵
(舟子) 中村大、中村歌昇中村信二郎
(唄・三味線) 東音宮田哲男・杵屋五三郎 社中
(囃子) 堅田喜三久社中

 ところで、3年位前に歌舞伎座で、富十郎が「一世一代」の船弁慶を演じた際、途中休演した際のピンチヒッターって誰でしたっけ?ちょっとびっくりな人だった記憶がある。もしかして左団次?→早速、一昨年の顔見世で、菊五郎がピンチヒッターだとasariさんからコメントいただきました。
 ついでに、10年以上前になりますが、富十郎が初めて(?!と本人がどこかでいっていたのを新聞か雑誌で読んだような気がするので)病欠したときの勧進帳、弁慶の代役が左団次だったような。。。1994年10月あたりだったかな?まだ毎月見て似ない時代のことで、私もこのときの勧進帳は未見です。残念!1994年10月は、確か国立で梅幸の玉手も見逃した月。一生涯の無念!です。当時は梅幸の偉大ささえ知らなかったなあ。。。六代目の息子(養子とはいえ)だってことも知らなかったし。それにしても、実の息子よりも養子が才能あることをちゃんと認めて、平等に育てた六代目夫妻は凄い人たちだとつくづく思う。

遅くなりましたが、昨日の感想。なかなか見がいのある3時間35分でした。4匹(人)の獅子の石橋は迫力抜群、横一線の橋掛かりから能舞台も、柱がなくって面白い。ただ、私のお席、前から4列目の真ん中は少々前過ぎて、舞台を見上げる形となり、地謡の8人のうち、四人の顔が見えないという位置。それでもデカイNHKホールですから、歌舞伎座なら8から10列目くらいの遠さなのでしょうか?橋のシテの関根祥六も息子さんで子獅子の一人を演じた関根祥人さんも度々能楽堂にて拝見しておりますが、迫力満点。凄い切れ味で、獅子が飛び回っていました。テレビでもそれは伝わるのでは・・・(8月29日にNHK綜合で流すそうです。)。
 次の舞踊は豪華絢爛。女性ばかりですけど、人間国宝花柳寿南海さんはじめ、当代を代表する猿若演者の愉快な舞踊に贅沢なお囃子連中。男性の長唄常盤津に、女流義太夫のかえかいというのも面白い。私は余りに前だったので響きがわからなかったが*1放映でチェックしたい。続いて新潟・京都先斗町・江戸の座敷舞の絢爛たる豪華さ。
 この関係からか、今日の観客席は異様な雰囲気。大体、入り口に入ってすぐに文楽中堅人形遣いの吉田玉女夫妻らしき人をみてから、有名人ぞろぞろ。或いは、その方面、というか、お弟子さん全員集合という感じ。私は休憩時間に居場所がなくって辛い思いをした。以前にも2回、この公演には来ているが、1階席だったことも含めても、今日はとりわけ普通の単なる見たいだけの観客の比率が少なかったような気がする。平均年齢もかなり高い印象。ほとんど、定年前後の年齢より上のようなイメージだった。
 さて、眼目の船弁慶。1年半前には、3日だけ休演したというが、休演前の舞台でも、すくなくとも後シテの花道の入りは物凄い迫力だった。たまたま1階後方、花道よりの2等席に陣取っていたので、友人とその迫力を目の前で見た感想を言い合った記憶が鮮明にある。それが、NHKホールの変形舞台のせいだけでなく、それでも十分な長さを確保したと思われる花道の入りを見ても、やはり富十郎さん、足腰がかなり弱られているのかな、と感じた。それは前ジテの静でも感じたことだ。確かに満75歳を越えられた今、普通に考えても、どんなに元気な方でも、歌舞伎を見に出かけられるだけでもまだ元気、といわれそうなお年なのである。かつての元気な姿のイメージを損なわないような演目をこれから見たいと痛切に感じた。舞台そのものは、大変な緊張感。吉右衛門梅玉はじめ、しっかり脇は固められていて、口跡のいい役者ばかり。これも放映が待ち遠しい限りである。

追記:三都の座敷舞だが、ここで中村芝のぶが入っても、全く違和感が無かったであろうことは言うまでもない。

追記(2):女義太夫の三味線は、私が1日体験で習った寛也さん。やはり、こんな大舞台でも弾かれるような大物だったんだ。実は、大きな声で言えないけれども、あの体験の日、彼女に失礼なことをいってしまったなあ。。。でも綺麗だなあ。だけど、あの髪型似合ってないなあ。伝統芸能の女性器楽演奏者の髪型って、若いヒトほどいつもへんだと思ってしまう。寛也さんは現代的な顔立ちだからだろう。それにやや童顔?

追記(3):種太郎君、もう四天王をするまでに成長しているとは!梅幸さんご存命のときに初舞台だった記憶がありますが、間違いかな?お父様の歌昇さん譲りのいい声、楽しみである。

追記(4):私は昨年暮、渋谷の観世能楽堂で、関根祥人さんの凄い演技を見ました。すいません、記憶障害なのので度忘れしましたが、歌舞伎で右近さんがよくやるバタッと身体ごと一直線に倒れる演技。歌舞伎では前に倒れるのを、関根祥人さんは後ろに倒れたのです。余程の鍛錬がないと頭を打つだろうけど。戸板返しじゃなくって、なんだったっけ?『なんとか倒し』そうだ、『仏倒し』でした。逆仏倒しを見事に演じたのです!

*1:女性の小さな手での義太夫三味線の撥さばきが巨大ホールでどうなるのかがよくわからなかった。