杉村春子と坂東玉三郎

昔の歌舞伎観劇客が狭い席で着飾って夜明けから日没まで,お茶屋での休憩があるにせよ楽しんだ事を鑑みて,いくら格段に相対的に安くなったとはいえ,前の席に膝が着く様な狭い椅子席に11時間籠もった疲れを未だにひきづる私.

が,昨日感じた事を書かなかったのでざっと杉村春子坂東玉三郎との違いの印象を.一言で杉村春子はシャープで男性的,玉三郎はもっと冗長で綺麗でより女性的.新劇女優と歌舞伎女形との違いを改めて思う.杉村春子のおそので印象的だったのは最後の台詞,亀遊さんは寂しがったんだよう(あくまでも私のあてにならない記憶なので多少の違いあり),が忘れられない.その一言だけで全てが見えるような説得力があった.一方,玉三郎はもっと動作も台詞も多かった.もしかしたら杉村春子も,もっと沢山最後の台詞があったかもしれないが,私の記憶に残るのはそこだけ.平成3年10月には海外にいたので,それから2年位してから文学座の旅公演ででも見たのだろうか?90歳近い年齢とは思えぬ台詞の切れだけは忘れられない.

昨晩は亀遊役の七之助も好演.玉三郎の指導あってこそだろうが,役にハマっていた.楽での成長ぶりが今から楽しみ.福助のマリアはご馳走.美形女形なのにあぁも出来る成駒屋,いつか新しい歌右衛門像が見られる日が来るだろうが.