コクーン歌舞伎「桜姫東文章」

 たまたま、ベルリン・アンサンブルの「アルトゥロ・ウイの興隆」を見た後飛んでいったからかもしれないが、その分、かえってドイツのこのストレートプレイと重なって見れて、大変新鮮だった。*1
 まず最初の場面から。舞台上に大きくたれ下げられた福助の桜姫を真ん中に、両側を橋之助権助と清弦との似顔絵が、なんとなくパリの劇場にあるような雰囲気をかもし出す。とくに桜姫のところ、わざわざローマ字、フランス語風に"saquerahime"と書いてあることも理由になろう。舞台が始まっても、どこかの新劇用の小屋(シアターコクーンこそ新劇ようの小屋ですが)の倉庫風にその中をとってつけたような歌舞伎の演台を、これも昨年か一昨年みた『ニンゲンご破算』の舞台に出てきたような変わったなりをした黒子がいちいち運ぶのも、何故か黒子にも目が言ってしまう。これも新劇風。南北の台詞を聞いているというよりも、昔風の新劇台本を聞いているきになることも大きい。勿論、その分、現代人にはわかりやすい。
 せっかく福助奮闘なのに、是非とも最初の場面、白菊丸と清弦との心中場面も見たかった。*2福助の立役は、女形のわりには赤星十三郎など結構骨太で好きなので*3、それもあって残念。もう一つカットされていた、権助にレイプされる場面も是非見たかった。
 2階だったため、吊り下げた昔風でありながらモダンなつり電灯が素敵だった。ラスト、福助は桜姫、というよりも、舞踊の将門から出てきたみたいだった。
 千秋楽ということで、最後はお定まりのカーテンコール。私はスタオペが嫌いなので、スタオペしなくてもいい席で助かった。スタオペを見ているのはいいのだけれども。2階だったので、1階席では見えなかった、橋之助がカーテンの向こう側から手をふった姿が見えたのが嬉しかった。数年前のコクーン歌舞伎三人吉三」を彷彿させる桜吹雪が印象的。

追記:最後に大きな花束を贈ったおば様は、いつも歌舞伎座で「ナリコマヤ!」の素晴らしい掛け声かけている人かな?とも思ったが、そうなら今日もその声があったはずなので違うでしょう。
(2):ミセス福助も嬉しそうだった(帰りがけ)。昔は妖精のようだった福助夫人も今はいっちょ前のたくましいおかみさんに。若乃花夫人の美恵子さんも同じ道をいっている感じ。

*1:そう、いわばパリで歌舞伎を見ているような感覚にすんなりと入れたので。

*2:それにしても、どうしてこの二人は手に手をとって海に沈まなかったのだろうか?

*3:勧進帳義経もいい